研究成果

学会論文

NO 論文名 開催日 開催場所
1 湿式外壁用土台水切りの腐食に関する一実験 2013.8.30~9.1 北海道大学
2 下地木材と接触する金属屋根葺き板の耐食性に関する実験 2014.9.12~9.14 神戸大学
3 防腐合板に接触する金属製水切りの電食について 2014.9.12~9.14 神戸大学
4 換気役物の小屋裏換気性状に与える影響に関する研究 その1 研究概要ならびに換気性状予備実験について 2014.9.12~9.14 神戸大学
5 住宅における通・換気と木材腐朽性微生物の侵入に関する一実験 2014.9.12~9.14 神戸大学
6 バルコニー手すり壁笠木周りの防水性に関する一実験 2014.9.12~9.14 神戸大学
7 外壁通気構法におけるバルコニー周辺部の侵入雨水の挙動について 2015.9.4~9.6 東海大学
8 実大住宅の外壁面に作用する圧力差の実測調査 2015.9.4~9.6 東海大学
9 外壁通気構法におけるバルコニー周辺部の侵入雨水の挙動について その3 手すり壁面と角度をなす風の影響:実験概要 2016.8.24~8.26 福岡大学
10 外壁通気構法におけるバルコニー周辺部の侵入雨水の挙動について その4 手すり壁面と角度をなす風の影響:実験結果 2016.8.24~8.26 福岡大学

論文1 湿式外壁用土台水切りの腐食に関する一実験

開催日:2013.8.30~9.1 開催場所:北海道大学



論文2 下地木材と接触する金属屋根葺き板の耐食性に関する実験

開催日:2014.9.12~9.14 開催場所:神戸大学



論文3 防腐合板に接触する金属製水切りの電食について

開催日:2014.9.12~9.14 開催場所:神戸大学



論文4 換気役物の小屋裏換気性状に与える影響に関する研究 その1 研究概要ならびに換気性状予備実験について

開催日:2014.9.12~9.14 開催場所:神戸大学



論文5 住宅における通・換気と木材腐朽性微生物の侵入に関する一実験

開催日:2014.9.12~9.14 開催場所:神戸大学



論文6 バルコニー手すり壁笠木周りの防水性に関する一実験

開催日:2014.9.12~9.14 開催場所:神戸大学



論文7 外壁通気構法におけるバルコニー周辺部の侵入雨水の挙動について

開催日:2015.9.4~9.6 開催場所:東海大学



論文8 実大住宅の外壁面に作用する圧力差の実測調査

開催日:2015.9.4~9.6 開催場所:東海大学



論文9 外壁通気構法におけるバルコニー周辺部の侵入雨水の挙動について その3 手すり壁面と角度をなす風の影響:実験概要

開催日:2016.8.24~8.26 開催場所:福岡大学



論文10 外壁通気構法におけるバルコニー周辺部の侵入雨水の挙動について その4 手すり壁面と角度をなす風の影響:実験結果

開催日:2016.8.24~8.26 開催場所:福岡大学



寄稿・熱と環境

出典元:ダウ化工株式会社 季刊誌 【 熱と環境 VOL.26 】

















建築様式の変化

日本の建築様式の変化と空調手段の変遷

時代住居の様式暖房・排気手段
縄文時代竪穴式住居排気は天井より自然排気
弥生・古墳時代穀物を水害や動物から守る高床式掘立柱(ほったてばしら)に、萱(かや)葺き屋根。伊勢神宮の神明造りなど。住居は木造のため、気密性はない。吸気・排気は自然に行なわれた
飛鳥時代強い胴張のある円柱を始め、その上に乗る皿板の付いた大斗(だいと)、軒を支える一木から刻み出した雲形の組物(くみもの)、卍(まんじ)くずしの組子(くみこ)を入れた高覧(こうらん)や人字形(じんじけい)の割束(わりづか)などで様式を構成。法隆寺の金堂、五重塔などの木造建築が進んだ。住居は木造のため、気密性はなく自然に吸気・排気していた。軒の出が大きく、自然換気が出来ていた。連子窓などで吸気・排気した。連子窓とは、細い角材を縦または横に一定間隔に打ちつけた窓。
平安時代寝殿造り。中央に南向きに建てられた寝殿の左右背後には対(たい)の屋(や)が設けられ、寝殿と対の屋は渡り廊下(渡廊、渡殿)で連絡。宇治の平等院両側に延びた翼廊(よくろう)と一体になり、庇を裳階 (もこし)とした建築構造や壁画、装飾具、螺鈿 (らでん)などを配した荘厳な堂内はまさに造形と工芸を極めた建物など。平安京の町屋の平面をみてみると、間口の右側半分に入り口を設け、左側半分を窓としています。入り口の奥に暖簾がかかっており、土間がさらに奥まで続いていることが予想できます。つまり、奥まで通じる土間は通り庭として機能し、これに沿って部屋が並んでいるようでした。住居は軒の出が大きく、空気が出入りする窓もある。木造のため、気密性はなく自然に吸気・排気していた。
鎌倉時代主殿造りは、主殿を中心に、台所・厩(うまや)などを配した中世の武士の住宅にみられる様式。仏教建築が盛んであって、大仏様と禅宗様の新様式で導入された構造と意匠が積極的に和様に取り入れられ、構造的にも堅固で新しい感覚が取り入れられた。住居は木造のため、気密性はなく、自然に吸気・排気されていた。
室町時代武家階級の住宅では、禅宗様の影響色の濃い書院造りと呼ばれる洗練された建築様式が生まれました。銀閣は2層構造の楼閣で、1階が書院造住宅風、2階が禅宗様仏堂風に建てられています。また、室町時代の中期には、住宅建築に書院造りと呼ばれる新様式が生まれました。これは建物の入り口に玄関を、また奥には書院と呼ばれる間を設け、各室を壁や襖、障子で区切り、天井を張ったものです。書院には床の間や違棚、付書院などが設けられ、畳を敷きつめ襖には絵を描き、室の前には庭園を設けるのが基本的な形でした。住居は木造のため、気密性はなく、自然に排気されていた。
安土桃山時代武将の趣向を反映した力強く豪快な造りの城郭が築かれ、邸宅も華やかな書院造りの建物が建てられました。その一方で、茶の湯の大成者の千利休によって、洗練された意匠を備えた草庵茶室が完成されました。数奇屋風書院造り(数寄屋造り)木造のため、気密性はなく、自然に排気されていた。
江戸時代主室に座敷飾りの床(とこ)・違棚・書院・帳台構を備えた建物の様式を書院造といいます。柱は四隅の面を取った角柱で、畳を敷き詰め、建具は引き違いになりました。内部は完全な「部屋」に別れます。主殿造りまでは、間仕切りをしていても上部が開いていました。数奇屋は、書院造を基礎として、室内を軽妙な意匠とした建物の一般に数奇屋造りと呼びます。柱は面皮柱を使用し、欄間や釘隠しの意匠などでしゃれた室内空間を作り出しています。正規の書院造の気品を失わずに堅苦しさを脱却して日常の居室ともなりうるようにしている。数奇屋造りの書院、官学校や藩学校に講堂や聖堂が作られた。瓦葺き。農家、例えば、外観は軒先が頭にぶつかるくらい低く、周囲は大半が土壁で開口部があまりありません。内部は、半分ほどが土間で床のある部分も土壁や板囲で区画し囲んでいます。とくに寝室にあたる「なんど」はほとんど窓もありません。屋根は萱葺。また、庶民は床の間などの設置が許されなかった。江戸の庶民の長屋などは粗末な板張り。木造のため、気密性はなく、自然に排気されていた。煮炊きはかまど、囲炉裏。燃料は薪、炭等。暖房はひばち、こたつ、あんかなど。屋内は煙が充満するので排気のための煙突などの排気口があったと思われる。飛騨白川郷合掌造りの建物全体に囲炉裏の煙や熱が行き渡るように工夫されている。最上階には小屋裏より煙を出す窓がある。
明治時代
大正時代
昭和戦前
木造茅葺の平屋、又は二階屋。屋根は萱葺。一部は瓦葺き。西洋建築を積極的に取り入れた。殖産興業。鹿鳴館など。明治時代には、他の分野と同様に住宅においても「近代化=西欧化」の動向が進むが、実際に洋風の住宅(西洋館)を建てるのは、政治家、実業家など限られた階層の一部の者に限られ、その場合でも、ふだんの生活は併設された和風住宅で行う場合が多かった。明治後期から昭和初期の富裕層により立てられた住宅建築は、当時の日本の豊富な木材と職人の高い技術に支えられ、最も優れた品質を持っている。大正時代以降、サラリーマン、都市知識人ら都市部の中流層が洋風の生活に憧れ、一部洋風を採り入れた和洋折衷の文化住宅が都市郊外にも多く造られるようになった。しかし、家の中では靴を脱ぎ、畳でくつろぐといった生活スタイル自体はほとんど変わらなかった。これは関東大震災後のモダンな集合住宅である同潤会アパートや、都心部の店舗兼住宅(看板建築)でも同じである。関東大震災が発生。耐震性・防火性を求められた。軍が政権を掌握。第二次世界大戦へ。太平洋戦争の空襲で日本の都市部は破壊された。木造のため、気密性はなく、自然に排気されていた。昭和20年までは煮炊きはかまど、囲炉裏。燃料は薪、石炭、木炭、練炭等。暖房はひばち、こたつ、あんかなど。家ごと暖房する発想はない。寒冷地では、薪ストーブなどで広範囲に暖房。屋内は煙が充満するので当然排気のための煙突などの排気口があった。隙間風の通る通気性の良い住宅であった。
昭和戦後
平成前半
木造二階立てモルタル壁、板張り、土壁、瓦葺き。質より量を確保するための政策が取られた木造二階建て、サイディング壁、瓦、スレート葺き、内装はせっこうボード等。集合住宅が普及。超高層建築物も普及。電化がすすみエアコンなども普及。日本窯業外装材協会にて平成13年4月に窯業系サイディングの通気構法が全国的に標準工法となった。住宅金融支援機構に小屋裏換気の基準が設定され、屋根の棟換気などの設置が標準化してきた。平成15年に室内の24時間換気が義務化された。木造のため、気密性はよくない。電気こたつ。ガスや電気の炊飯器など。ガス・電気、石油ストーブエアコンなどが利用され集中的に暖房し、結露などの現象が発生するようになった。換気棟や通気部材を用い、外皮に湿気が滞留しないようにしていく必要がある。
今後の住宅木造住宅であっても気密性の高い省エネ住宅。自然エネルギーを活用。冷暖房はエアコンなどを最小限に使用する。デザイン性も求められるため、軒の出がないシンプルな形状の住宅になることが多い。外皮の通気を確保する必要があります。

<まとめ>

日本の木造住宅は過去の歴史を振り返ると、平成初期までは通気が自然に確保されていた住宅がほとんどでした。構造材は自然に乾燥していたと考えられます。しかし、平成20年の省エネ基準の住宅が今後建設されるにあたって、気密性が高い住宅の居室内の換気措置は義務付けされていますが、外皮の壁体内などは、義務付けされていません。

 かつ、デザイン性を求める時代のため、軒の出がないなどの雨仕舞いが考慮されていない住宅が増えており、防水性が確保された通気部材を使用する必要に迫られています。

 「住まいの屋根換気壁通気研究会」では、出来るだけ長持ちする耐久性の高い木造住宅にするための通気・換気措置に関して、推奨できる納まりや部材の研究に取り組んでいます。

法的な基準

<換気・通気に関する法的な基準について>



換気については、以下の法律で、換気された室内の状態が示されているにすぎません。

1.建築基準法では、全ての居室に換気設備の設置が義務付けられています。
(除外:外気に常時開放された開口部等の換気上有効な面積の合計が、床面積に対して15%以上の場合など)
おおむね以下の基準を満足することとなっています。
浮遊粉塵量:空気1㎥につき0.15g以下
CO含有率:10ppm
CO2含有率:1000ppm以下
温度:17℃~28℃。室内温度を外気温度より低くするときは、その差を著しくしないこと。
相対湿度:40%~70%
気流:05m/sec以下

2.建築物衛生法では3000㎡以上の建物(学校は8000㎡以上)には、空気調和設備あるいは機械換気設備を設けて、以下の目標基準値を守ることとなっています。
浮遊粉塵量:空気1㎥につき0.15g以下
CO含有率:10ppm(特別な事情がある場合、厚労省の定める基準地以下)
CO2含有率:1000ppm以下
温度:17℃~28℃。室内温度を外気温度より低くするときは、その差を著しくしないこと。
相対湿度:40%~70%
気流:05m/sec以下
ホルムアルデヒドの量:空気1㎥につき0.1mg/㎥(0.08ppm)以下

3.労働安全衛生法でも労働者が執務する事務所などで、一般の換気は換気に有効な開口部面積を床面積の1/20以上とするが換気設備を設けCO濃度を50ppm、CO2濃度を5000ppm以下にすることとなっている。また、中央管理式空気調和設備等を設ける場合は下記基準に適合させること。
浮遊粉塵量:空気(1気圧,25℃)1㎥中0.15g以下
CO含有率:10ppm以下(ただし外気が汚染されているためCO含有率10ppm以下の供給が困難なとき20ppm以下)
CO2含有率:1000ppm以下
温度:17℃~28℃。室内温度を外気温度より低くするときは、その差を著しくしないこと。
相対湿度:40%~70%
気流:05m/sec以下
ホルムアルデヒドの量:空気1㎥につき0.1mg/㎥(0.08ppm)以下などの基準があります。

また、住宅の高断熱高気密化にともない、VOCをはじめとした、化学物質によるシックハウス症候群の増加が問題になり、平成15年(2003年)に建築基準法が改正され、24時間常時強制的に換気できる環境を整えるための換気設備の導入が法的に義務化されました。
24時間換気システムで必要な換気量は0.5回/h、つまり、2時間に1回家中の空気が入れ替わる換気量を確保しなければならないことになります。

一方、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が平成11年6月23日に制定され、その中に定められた事項の一つに、住宅取得者が前もって住宅性能の違いを比較出来るように「住宅性能表示制度」が定められました。

住宅性能表示制度とは、住宅の性能を統一された表示ルールで比較できるように表示を行うことを定めた制度のことです。10項目の、設計・施工の性能を等級により具体的に明示したもので、住宅そのものの性能の違いが一目でわかるうえに、着工前に欲しい性能の等級などを決めることができます。その項目に関して平成27年4月1日に見直しがなされ、新築住宅の必須評価項目が4分野9項目になりました。

必須評価項目には、劣化の軽減に関することで「劣化対策等級(構造躯体等)」があり、また、空気環境に関することで「換気対策」が選択評価項目となっていますが、建築物の躯体に関する換気・通気対策は具体的には示されていません。

木造住宅の躯体に関する換気・通気に関しては、住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書に小屋裏換気に関しての具体的な数字が記載されているに過ぎません。これは、住宅金融支援機構が融資の際に適用される基準であって、法的な規制ではないのが実状です。

長期優良住宅の普及の促進に関する法律



長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅である「長期優良住宅」について、その建築及び維持保全に関する計画(「長期優良住宅建築等計画」といいます。)を認定する制度の創設を柱とする「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が平成20年12月に公布され、平成21年6月4日に施行されました。

この法律では、長期優良住宅の普及の促進のため、構造躯体等の劣化対策、耐震性、可変性、維持管理・更新の容易性、高齢者等対策、省エネルギー対策、一定以上の住宅規模、及び良好な景観の形成への配慮等を定めています。

その中にある、「構造躯体等の劣化対策」では、「数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること。(通常想定される維持管理条件下で、構造躯体の使用継続期間が少なくとも100年程度となる措置をとること。)」と明示されています。

新築木造の場合、

「①床下及び小屋裏の点検口を設置すること。
②床下空間の有効高さを330mm以上とすること。」

が長期優良住宅の認定基準となっています。

また、国交省の補助事業である「長期優良住宅化リフォーム推進事業」では、小屋裏について新築同様点検口を設置することに加え、2以上の換気口の設置(小屋裏木部湿潤状態になく、維持保全が強化されている)が劣化対策の必須条件となっており、申請が受理されれば補助金が支給されています。

木造の場合、維持管理の為に床下や小屋裏に点検口を設ける措置が耐久性向上(100年住宅)には直結しているとは考えられません。建物は定期的に適切な手入れをしていかないと劣化が進むので、建設時に材料の選定や防湿処理など劣化しにくい工夫をしておく必要があります。木造住宅なら構造躯体である土台や柱を腐朽しにくくしておくことが大切です。そのためには、湿気に強い材料を使うか、湿気を減らす工夫が必要です。たとえば湿気に強い種類の木材を使う、防蟻・防腐処理を行なう、床下全体をコンクリートで固めるなどの措置が考えられますが、換気・通気部材等を使用して湿気を減らす工夫が特に重要と思います。

当研究会では、木造住宅の場合、「いかに外皮を構成するまたは隣接する、構造材や下地材である木材が、腐朽しないで健全な状態を長く維持させることができるか」が、重要なテーマであると思います。
木造住宅の構造材として使用されている木材の含水率を低く維持できる措置こそが、推奨できる納まりではないかと考えています。