技術資料

小屋裏換気(屋根換気)

最近の住宅は、在来木造住宅においても気密や断熱性能が著しく向上しています。
その結果、小屋裏(屋根裏)内部での結露の発生が大きな問題となっています。結露すると梁や垂木、野地板等の構造体の腐朽による耐久性能の劣化や、断熱材の濡れによる断熱性能の低下、カビの発生等をもたらすことになります。

写真は、屋根裏の温度をサーモグラフィーで撮影したものですが、夏の屋根裏は暑いときには60℃近くに達します。
太陽に熱せられた屋根材が高温になり、その直下にある小屋裏が熱気や湿気が滞留しやすい空間になります。

この熱気や湿気を滞留させないために設置するのが「小屋裏換気」です。
住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書の基準では、屋根断熱といわれる屋根裏面に直接断熱材を仕込む断熱方式の場合は、小屋裏が室内空間扱いとなり小屋裏の換気措置は必要ではなくなりますが、天井裏に断熱材を敷き込む天井断熱方式の場合には必須の換気システムです。
写真-1 屋根裏のサーモグラフィー
図-1 天井断熱と屋根断熱
天井断熱における木造住宅の小屋裏空間には、室内や外気からの湿気・その他木材やコンクリートの初期放湿などにより、建物内外の温度差による結露が発生し易くなります。その結露水が原因で、カビの発生や構造材を腐らせる原因となります。
小屋裏換気により小屋裏空間に滞留する湿気を希釈することで、湿気の飽和状態を抑制し結露を防ぐ目的が「小屋裏換気」であり木造の耐久性向上に不可欠な仕組みとされています。しかし、小屋裏内の結露やカビが発生する事故は、後を絶ちません。
図-2 天井断熱の場合の換気経路
小屋裏の結露事故の多くは、小屋裏換気の設置方法や換気(通気)経路の欠損が原因とされています。
結露によって断熱性能が損なわれ、構造木材の腐朽につながります。

熱気や湿気の排出を目的として開発された「小屋裏換気」においては、小屋裏内の空気が十分に流れるように適切に設ける必要があります。効率よく湿気を排出するためには、換気棟の設置位置に注意しなければなりません。中央部分に集中的に配置すると換気棟から遠い部分の湿気は、排出に時間がかかり、結露リスクが高くなってしまいます。換気棟の配置は、バランスよく配置する事で結露リスクの危険性が低減されます。

また、屋根断熱に関して、前述の住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書の基準では、小屋裏換気孔を要さないと記載いたしましたが、当研究会では、小屋裏換気孔は必須であると考えています。木材の初期放湿や居室からの湿気によって結露が生じる可能性があり、その湿気を排出しなければなりません。そのためには、小屋裏換気孔を設けないと排出できません。屋根断熱の結露事故の多くは、換気(通気)経路の欠損が原因とされています。軒先からの吸気や換気棟の無設置、断熱材のせり出しが通気経路を阻害し、湿気の滞留場所となり、結露を発生させる現象が起き易くなります。垂木間ごとに、換気・通気経路をチェックし、垂木間毎の換気棟の設置や、頭頂部の垂木カットを行い、通気経路の確保に努めなければいけません。
図-3 屋根断熱の場合の通気経路
小屋裏換気孔の設置例

この「小屋裏換気」の具体的な技術規準は建築基準法では規定されていませんが、品確法における「劣化軽減措置」の一つに、小屋裏換気の仕様が評価基準として住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書」を基にした小屋裏の換気必要面積の最低基準として規定されています。換気方法には、棟換気・妻換気・軒裏換気などの組合せにより小屋裏の天井面積に対して吸気口及び排気口の有効換気面積が求められています。

【有効換気面積】(※品確法・木造住宅工事仕様書に準じています。)

小屋裏換気孔は、独立した小屋裏ごとに2ヶ所以上、換気に有効な位置に設ける。
換気孔の有効換気面積は、下記のいずれかの内容とする。

①(妻換気形式)
両妻壁にそれぞれ換気孔(吸排気両用)を設ける場合は、換気孔をできるだけ上部に設けることとし、換気孔の面積の合計は、天井面積の1/300以上とする。

②(軒裏換気形式)
軒裏に換気孔(吸排気両用)を設ける場合は、換気孔の面積の合計を天井面積の1/250以上とする。

③(軒裏換気・妻換気併用形式)
軒先に吸気孔を設け、小屋裏の外気に接する壁面に排気孔を設ける場合は、垂直距離で900mm以上離してそれぞれの換気孔の面積を天井面積の1/900以上とする。

④(棟換気形式)
軒裏又は小屋裏の壁のうち、屋外に面するものに吸気孔を設け、かつむね部に排気孔を設ける場合、吸気孔の面積を天井面積の1/900以上とし、排気孔の面積を天井面積の1/1600以上とする。
【有効換気面積】(※品確法・木造住宅工事仕様書に準じています。)
小屋裏換気孔は、独立した小屋裏ごとに2ヶ所以上、換気に有効な位置に設ける。 換気孔の有効換気面積は、下記のいずれかの内容とする。

①(妻換気形式)
両妻壁にそれぞれ換気孔(給排気両用)を設ける場合は、換気孔をできるだけ上部に設けることとし、換気孔の面積の合計は、天井面積の1/300以上とする。

②(軒裏換気形式)
軒裏に換気孔(給排気両用)を設ける場合は、換気孔の面積の合計を天井面積の1/250以上とする。

③(軒裏換気・妻換気併用形式) 軒先に給気孔を設け、小屋裏の外気に接する壁面に排気孔を設ける場合は、垂直距離で900mm以上離してそれぞれの換気孔の面積を天井面積の1/900以上とする。

④(棟換気形式)
軒裏又は小屋裏の壁のうち、屋外に面するものに給気孔を設け、かつむね部に排気孔を設ける場合、給気孔の面積を天井面積の1/900以上とし、排気孔の面積を天井面積の1/1600以上とする。

図-4 小屋裏換気口の設置例
換気棟(棟換気)・軒先換気とは、 軒先に設けた換気(吸気)孔から外気を取り入れ、屋根の棟(頂部)に設けた換気(排気)孔から、小屋裏内にこもった熱気や湿気を排出するのが、小屋裏換気です。軒先に設けた換気(吸気)孔になるのが軒先換気で、屋根の棟(頂部)に設けた換気(排気)孔が換気棟(棟換気)です。住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書」を基にした小屋裏の換気必要面積の最低基準が規定されており、小屋裏の天井面積に対して吸気孔及び排気孔の有効換気面積が求められています。換気棟・軒先換気には、瓦用、平型化粧スレート用、金属用など使用する材料や切妻、寄棟、片流れ、下屋などの屋根の形状によって、使用する換気棟・軒先換気も変わります。 「換気棟・軒先換気」を取り付けると、温度差による自然換気の働きで、湿気を含んだ空気や小屋裏の熱気を効率よく排気し、冬期の結露や室温の上昇を防ぎます。 効率よく湿気を排出するためには、換気棟の設置位置が注意しなければなりません。中央部分に集中的に配置すると換気棟から遠い部分の湿気は、排出に時間がかかり、結露リスクが高くなってしまいます。換気棟の配置は、バランスよく配置する事で結露リスクの危険性が低減されます。 また、近畿大学との共同研究「換気役物の小屋裏換気性状に与える影響に関する研究」で換気役物の換気量を確認した結果、【換気棟-軒先換気】は、【軒先換気のみ】の2倍以上に増加させることが示されました。このことから、【換気棟-軒先換気】は、効率的な換気方法であるということがいえます。

通気構法

最近の住宅は、在来木造住宅においても気密や断熱性能が著しく向上しています。その結果、壁体内部での結露の発生が大きな問題となっています。結露すると柱や間柱、土台等構造体の腐朽による耐久性能の劣化、断熱材の濡れによる断熱性能の低下をもたらすことになります。
多くの弊害をもたらす壁体内の湿気を滞留させない為の排湿を目的として設けるのが、外装材と躯体の間に防風材(透湿防水シート)により区画された〝通気層〟を設けた「通気構法」です。また、最近では外壁仕上げ取り合い部などから浸入した雨水を速やかに排出する雨水浸入防止対策に有効な構法としても採用されています。

木造住宅の外壁の隠蔽された空洞部(柱部)には、室内からの湿気の侵入や仕込まれた断熱材の僅かな隙間が原因で建物内外の温度差による結露が常習化します。

外装材と躯体の間に設けられた通気層には常に気流が流れ、この気流により壁体内に滞留する湿気を吸出す事で湿気の飽和状態を抑制し結露を防ぐ仕組みが「通気構法」であり木造の耐久性向上に不可欠な条件とされています。しかし残念な事に外壁内の結露やカビが発生する事故が後を絶ちません。
外壁内結露事故の多くが通気経路欠損や透湿防水シートの僅かな施工不具合が原因とされています。結露によって断熱性能が損なわれたり構造木部が腐朽したり、住まいの省エネ効率を低下させたり、構造安全性をも脅かすことにつながっています。

外壁内部の隠蔽部分の排湿を目的として開発された「通気構法」も、躯体外面に張られる〝透湿防水シート〟の施工はシートの継手や端部の押えを完全な状態にしなければ、通気に含まれる湿気が壁体側に侵入し結露を発生させる現象が起き易くなります。シートの張り方に膨らみ・シワ・めくれ・たるみが生じたり、断熱材のせり出しが生じたりがその原因とされています。また、通気構法においては、通気層内の空気が十分に流れるように適切に設けることが必要です。特に胴縁は通気が阻害されないように配置しなければなりません。開口部周辺は、建具枠周囲の通気が可能なように最低30mm程度の隙間を設ける。横胴縁は、1820mm内外に最低30mm程度の通気のあきを設ける。
この「通気構法」の目的は、壁体内結露を防ぎ木造建物の劣化リスクを抑制する事により耐久性向上を維持することにあります。品確法における「劣化軽減措置」の一つに外壁内通気工法の仕様が評価基準として規定されており、最近では、サイディングなどを外壁に乾式外装材として使用する場合は、殆んどこの通気構法を採用しています。
また、現在の住宅保証制度においても外壁をサイディングとする場合は、通気構法で施工することが保証条件となっています。

通気構法を採用することのメリット
(1)室内で発生し、壁体内に侵入した湿気を壁の外に排出することにより、壁体内の乾燥を保ち、結露を防ぎ、家を長持ちさせます。

(2)外壁のすき間等から浸入した雨水を、壁体内に浸入させずに屋外に排出します。

(3)通気層による遮熱効果により外気温の影響を少なくし、省エネになります。

換気・空気の流れについて
換気の種類には、設備に機械を利用するか否かによって自然換気と機械換気に分けられます。
両者を併用する場合は、ハイブリッド換気と呼ばれます。

自然換気
自然換気は、自然通風や空気の温度差による煙突効果によって空気が自然に入れ替わる換気のことです。
パッシブ換気とも呼ばれます。小屋裏換気・通気構法・床下換気に使用されて換気方法です。

【風力換気】
通気口を2ヶ所以上設け、その風圧差を利用します。

【温度差換気・煙突効果・重力換気】
空気が暖かいと比重が小さくなり、上昇する性質を利用します。

機械換気
機械換気は、換気扇や送風機を使用して強制的に換気を行うものです。強制換気や動力換気とも呼ばれます。
建築基準法では、居室において換気回数0.5回/h以上の常時換気(24時間換気)ができる機械換気設備の設置が義務付けられています。

【第一種機械換気】
給気・排気とも送風機を使用するもの。

【第二種機械換気】
給気を送付機で行い、排気を通気口で行うもの。

【第三種機械換気】
給気を通気口で行い、排気のみに送風機を使用するもの。

空気の移動
気象における空気の流れは、水平方向のものは風、鉛直上方向のものは上昇気流、鉛直下方向のものは下降気流となります。
例えば、海上の水蒸気の蒸発によって、上昇気流が発生する箇所の空気の密度がやや下がり、気圧がやや低くなることがあるなど、同じ海抜高度でも、少しずつ気圧は異なり、気圧の高低は常に変化しています。この気圧の山や谷を高気圧、低気圧と呼びます。気圧の差が生じると、高気圧の空気が低気圧の領域に流れ込みます。これが風の主な成因になっています。

上昇気流とは、空気のかたまりが上昇することです。
空気が暖められて軽くなることによって上昇する気流ができます。これが上昇気流です。
海水温が高い場合、上昇気流が発生しやすく積乱雲が発達します。上昇気流が激しくなると、気圧の差が大きくなり暴風雨が発生しやすくなります。
これが巨大化して平均風速が18m/secを超えると台風となります。水が高いところから低いところへ流れるように、空気のあるところでは、高い圧力の空気が低い圧力の空気へと侵入し、同じ気圧になろうとする原則が支配しています。また、水蒸気は空気より軽いので上昇することになります。

正圧(せいあつ) 屋外に比べて室内の気圧が高いこと
負圧(ふあつ) 屋外に比べて室内の気圧が低いこと

換気扇などで排気を続けると、閉め切った室内は負圧になります。反対に空気を押し込んでやると、気圧の高い正圧となります。
室内が負圧になると、屋外と同じ気圧にしようとして、隙間から風が入り込んできます。また、流入する空気で扉などが急に閉まったりします。トイレに換気扇をかけてを負圧にすると、ドアの隙間から廊下などの空気が流入します。トイレを負圧にすると、汚臭は廊下などに出ていかずに換気扇で屋外に排出されます。つねに室内外の気圧を同じに保とうとするので、正圧状態の部屋からは、空気が出ていこうとします。そのため、すきま風などは入らなくなります。負圧の部屋には室外から空気が入りこもうとします。

密閉容器内で中の空気に圧力差がある場合は、圧力が高い方から低い方へ流れ、圧力を均一にしようとします。(状態エネルギーを低くしようとする)。また、密閉容器内で温度差がある場合、温度の高い空気は膨張しますので圧力が高くなります。従って圧力の低い(=温度の低い)方向へ流れ圧力(=温度)を一定にしようとします。

一方、開放空間の場合では、圧力差がある場合は先の通り、圧力の高い方から低い方へ流れます。また、温度差がある場合は、温度の高い空気は上昇し、温度の低い空気は下降します。温度の高いほうから低いほうに流れるというわけではありません。壁体内においては、空気の流れ(通気)をどのように確保するかが重要なポイントです。自然換気が前提となっている換気であり、空気が流れる法則に従い、土台部に吸気口を設け、空気を取り入れ、温度差や風圧力によって上端や頂部の排気口より排出される構造(通気構法)が一般的に採用されています。

特に熱気や水蒸気は上昇して屋根の棟頂部や壁体の天端に集積されますので、その部分が結露するリスクが高まります。屋根の頂部や壁体の天端に通気部材を設置して通気・排気が出来れば、内部結露を予防することができます。木造住宅の外皮の通気経路の確保は、建物自体の耐久性能を高める重要な要素となります。
結露とは
結露とは、固体状態における物質の表面、または内部で、空気中の水蒸気が凝縮する現象のことです。
1m³の空気に含まれる水蒸気の最大量を「飽和水蒸気量」と言いますが、飽和水蒸気量は気温によって異なり、温度が10℃高くなる毎に、約2倍になります。 飽和状態の時の気温を「露点」と言います。

温度が高い空気は水蒸気を多く含むことが出来ますが、冷たい空気は水蒸気を多く含むことが出来ません。 したがって、暖気が冷えれば、保持しきれなくなった水蒸気が水滴に戻るのです。 日常の光景で、外気温と室内の温度差により、窓ガラスなどが曇ったり、水滴が付着したりする現象がよくみられます。 これが一般に言う表面結露です。

一般的な結露現象

例1. グラスに氷を入れたアイスコーヒーを飲むとき、グラスの表面が冷え、グラスのまわりに水滴が付着する現象。グラスのまわりには、空気中に含まれている水蒸気が存在しています。グラスの表面温度が冷却され、露点を下回ったときに空気中に存在している水蒸気が水滴になる状態。

例2. 冬季にめがねをかけた人が電車に乗った時にめがねのレンズが曇る現象。めがねのレンズの温度が外気で冷えており、電車内に入った瞬間にレンズ表面に水蒸気が曇りとなって付着した現象。

例3. 冬季に暖房した場合、室内温度が上昇。外気温と差ができる。窓ガラスの室内側の表面温度がその部屋の露点温度を下まわったとき、水滴が付着する状態。特に雨降りの日は空気中の湿度が高くなっており水滴が多く発生する。
例:温度20℃・湿度50%の室内における露点温度は、9.6℃であり、壁や窓などの表面が、9.6℃以下の場所で結露が発生します。

一方、内部結露は、建物の室内側に防湿層がなく、室内で発生した水蒸気が壁体内に侵入する場合に発生します。 空気は暖かければ暖かいほど水蒸気をたくさん含むことができ、逆に冷たければ水蒸気を含むことのできる量は少なくなります。水蒸気を多く含む壁体内の暖められた空気の温度が急激に下がり、露点温度以下になれば壁体内で内部結露が発生することになります。また、結露には「冬型結露」、「夏型結露」、「蒸し返し現象」などの表現があります。

①冬型結露
室内の水蒸気の量が多い場合に発生し、外気によって冷やされるガラス、サッシ、壁の中の温度が露点以下になる部分で生じます。

②夏型結露(逆転結露)
冬型結露の逆で、エアコンでよく冷やされた建物では、外部の湿った空気が壁の内部に侵入し温度勾配の露点温度以下の部分で発生する。夏のみに起こる現象で高温多湿の地域で、冷房をすることによって、外部の暑く湿った空気が壁の中に入り、冷房された室内側の壁に達して壁の内側に結露を起こす現象で、逆の空気の流れ、逆の位置に発生するので逆転結露とも言います。

③蒸し返し現象
これは日射を受けると外壁が50℃以上になり、その熱が外壁を支えている胴縁や構造用合板、柱を熱し、そこから水蒸気が発生します。放出した水蒸気の一部は木材に吸収されますが、残りの水蒸気は防湿層に達し、そこで室内の冷房で冷やされて結露をする現象のことをいいます。

結露が原因による悪影響について

水分が滞留することにより以下の現象が起こりやすくなります。

①カビが生える原因になる
②カーテンなどが汚れる
③屋根や壁などの外皮を構成する構造材や建材が腐朽して建物の劣化を招く
④臭う
⑤体調が悪くなる
等々、居住環境に大きな影響を与えます。

結露防止:「温度」「温度差」「湿度」をコントロールすることで結露防止はできます。

①窓ガラスはペアガラスなどを採用する。サッシは二重サッシや樹脂サッシを付ける。
②外皮に断熱材を用い、室内の表層の温度が外気の影響で下がらないようにしておく。
③24時間換気の設備を稼動させ、除湿をして室内の湿度が上昇しないようする。
④観葉植物などは、水蒸気を発生させ室内の湿度を上げる原因になるので避ける。
⑤壁体内及び外壁と壁体の間は、吸気と排気口のある通気措置を施し、湿気が上昇しないようにする。
⑥使用する材料の初期含水率や、工事中の雨水の漏れによる含水率の上昇をチェックし、含水率が高い場合は、含水率を下げてから次の作業をする。
等々が考えられます。当研究会では、可能な限り機械換気ではなく、自然換気・通気が重要と考えています。

部位別吸気・排気
寄棟・切妻屋根

化粧スレート・シングル

寄棟・切妻屋根 化粧スレート・シングル
立平

寄棟・切妻屋根 立平


寄棟・切妻屋根 瓦
片流れ屋根

化粧スレート・シングル

片流れ屋根 化粧スレート・シングル
立平

片流れ屋根 立平
下屋屋根

化粧スレート・シングル

下屋屋根 化粧スレート・シングル
立平

下屋屋根 立平
パラペット

パラペット
軒先

軒先
土台

土台
オーバーハング

オーバーハング
換気・通気性能と防水性能
【有効開口面積】
構造体の中で最小見付けの開口面積を有効開口面積とする。

【相当有効開口面積】
(財)建材試験センターのJSTM L 6201に規定する通気性能試験方法を用い、通気量Q(㎥/s)を計測する。通気率、隙間特性値、相当有効開口面積、流量係数、抵抗係数が算出可能となる。
試験条件:圧力差範囲10~50Pa

防水性能
【送風散水方式】

(財)建材試験センターのJSTM L 6401に規定する送風散水装置を用い、施工状態の水漏れ判定を行う。
試験条件:散水量4l/㎡・min、試験時間10分

【圧力箱方式】
(財) 建材試験センターのJSTM L 6402に規定する圧力箱装置を用い、施工状態の水漏れ判定を行う。
試験条件:定圧試験、散水量4l/㎡・min、試験時間20分

設置事例写真
不具合事例写真
リスク部位
公益財団法人住宅リフォーム紛争処理センターの住宅相談統計年報2015によります。
2014年度の新築での戸建住宅の不具合事象相談と部位(n=8,008)※複数カウント

主な不具合事象割合相談件数当該事象が多くみられる部位
ひび割れ20.2%1,620外壁、基礎
雨漏り16.0%1,278屋根、外壁、開口部、建具
変形10.8%865床、開口部、建具
はがれ9.2%737外壁、内装、床
汚れ7.0%561床、外壁、内壁
性能不足6.4%512設備機器、開口部、建具
漏水5.2%415給水、給湯配管、排水配管
作動不良5.1%411開口部、建具、設備機器
傾斜4.4%356
床鳴り3.8%306
排水不良3.8%304排水配管
きず2.8%223床、開口部、建具
腐食・腐朽2.5%197床、外壁、柱
結露2.2%178開口部、建具、内壁
沈下2.0%161地盤
異常音1.7%139設備機器、外壁、床
異臭1.0%80排水配管
遮音不良0.9%69
2014年度の新築での共同住宅等の不具合事象相談と部位(n=1,376)※複数カウント
主な不具合事象割合相談件数当該事象が多くみられる部位
雨漏り13.1%180屋根、外壁
ひび割れ12.2%168内壁
漏水11.8%162給水、給湯配管、排水配管
はがれ11.6%159外壁
汚れ9.3%128
変形8.8%121床、開口部、建具
遮音不良5.0%69
性能不足4.7%65設備機器
異常音4.7%64天井、設備機器
排水不良4.7%64排水配管
作動不良4.2%58設備機器、開口部、建具
きず3.2%44
結露3.1%42床、開口部・建具、内壁
床鳴り2.9%40
傾斜2.8%38
異臭2.4%33排水配管、設備機器
腐食・腐朽1.2%17
沈下0.8%11地盤
新築住宅の不具合事象相談に関して、「戸建住宅」では、「ひび割れ、雨漏り」が多く、「共同住宅等」では、「雨漏り、ひび割れ」が多い。また、「傾斜」は「戸建住宅」に多く、「遮音不良、異常音」は「共同住宅等」の相談に多く発生しています。
2014年度リフォームでの戸建住宅の不具合現象相談と部位(n=3,451)※複数カウント
主な不具合事象割合相談件数当該事象が多くみられる部位
雨漏り17.1%589屋根、外壁
はがれ12.1%417外壁、屋根
ひび割れ11.3%391外壁、屋根
変形8.3%286
汚れ8.2%282外壁、床、屋根
性能不足5.4%186設備機器、屋根
きず4.8%166
漏水4.6%160給水、給湯配管
作動不良4.3%149開口部、建具、設備機器
排水不良4.1%140排水配管、屋根
傾斜2.4%83
腐食・腐朽2.1%72床、柱
床鳴り1.5%53
結露1.1%39開口部・建具、内壁
異臭1.0%34排水配管
異常音0.9%32設備機器
沈下0.5%16地盤
遮音不良0.2%8開口部・建具
2014年度リフォームでの共同住宅等の不具合現象相談と部位(n=844)※複数カウント
主な不具合事象割合相談件数当該事象が多くみられる部位
変形14.7%124床、開口部・建具
はがれ14.2%120床、内壁、内装
漏水10.1%85給水・給湯配管、排水配管
汚れ9.1%77床、内壁
雨漏り6.9%58屋根、外壁
ひび割れ6.0%51床、内装、外壁
性能不足5.5%46設備機器
きず5.2%44床、開口部・建具
作動不良5.1%43設備機器、開口部・建具
傾斜3.6%30
床鳴り3.6%30
排水不良3.4%29排水配管
異臭1.7%14内壁、排水配管
異常音1.1%9設備機器
遮音不良1.1%9
結露0.9%8内壁・内装
腐食・腐朽0.8%7外壁、バルコニー・庇等
沈下0.7%6地盤
上記結果よりいかに雨漏り事故の相談が多いかがご理解していただけるかと思います。 その雨漏り事故が発生する部位は屋根、外壁、開口部等となっています。最近の戸建住宅は、軒の出を少ない外壁の雨掛かりが考慮された設計にはなっていない住宅が増えています。また、屋根勾配も北側斜線規制などが考慮され緩勾配屋根が増えて、雨水がすぐに排水されないで滞留しやすい形状の住宅も増えています。

その中で特にリスクが高くなるところは雨水が滞留しやすい場所です。例えば、屋根の谷部、壁と取り合う下屋の立ち上り部分、べランダ・パラペットの天端部分、ケラバ部分などの他部位との取り合い部分などです。雨仕舞を十分に考慮し、下葺き材等を適切に施工し、使用する屋根材の施工マニュアルに従った納まりであれば雨漏りは防げたと思います。

また、換気・通気の観点からみますと、結露や腐食・腐朽の項目も不具合事象相談として掲載されていますが、雨漏りした水が乾燥しないために腐朽につながったとも考えられます。これは、通気経路が確保されていないために構造体が乾燥しない納まりのために起きた不具合とも考えられます。  このようにデザイン性を求めた木造住宅は、雨掛かり上、雨漏りに対するリスクが非常に高くなっています。

また、壁体内の通気経路が確保されていないことも多く、壁体内結露などが発生するなどのリスクも高くなっています。こうしたリスクを回避するためには、当研究会では、防水性のある通気・換気部材等を適切に使用することが特に重要なことと考えています。